信用不安のある取引先への対応
質問
ある取引先は最近毎月のように支払い猶予を求めてくるので,経営が危ないのではないかと思っています。この会社が倒産して回収ができなくなると困ってしまうので,これは避けたいと思いますが何か手だてはあるでしょうか。
回答
情報収集を行う
なるべく早期に兆候をつかまないと,効果的な対応も取れません
顕著な例として,取引先が支払い猶予や支払い方法の変更を求めてきたら,危険な兆候です。
また,商業登記簿謄本・不動産登記簿謄本から得られる情報も重要です。役員の交代や営業所の移転,あるいは担保の提供などの情報を得ることができ,危機の端緒をつかむことができるかもしれません。
明確で危機に対応できる契約書
1 明確な契約書
契約内容が不明確で,支払いにあたって紛争が生じたり長期化したりすると,早急な支払いを受けられません。あるいは,相手方代理人の弁護士や裁判所に契約自体を否定されかねないこともありえます。これは倒産危機状況だけでなく,通常の状況でも同様です。
契約書上,金額,支払日,支払い方法等の重要な事項を明確に決めておくことで,紛争が生じたり長期化したりすることを防止し,早急な支払いが受けられることにつながります。
2 危機に対応できる条項
また,倒産の危険が生じたときに対処できるような条項を入れておくことも重要です。問題が生じた場合に漫然と何の対応もできないようでは,契約書を作成する意味がありません。
たとえば,長期の分割払いを定めている場合,支払いを怠ったときには分割払いの利益を失い,残額を即座に一括払いしなければいけないという期限の利益喪失条項を定めておくことは重要です。
また,解除に関する条項をきちんと定めておくことにより,危険な取引先との契約関係を絶ち,当方のみが義務を履行しなければならないような場合を回避できます。
担保の提供を受ける
取引先だけに支払い義務を負わせるのではなく保証人をつるとか,確実に支払いを受けられるよう,担保を提供させたりすることが考えられます。
担保については,取引先に不動産等大きな財産がなくても,動産債権譲渡登記をし,商品の動産や売掛金を担保に入れさせることが可能です。これは,非常に有用な手段でありぜひ検討したいところです。そのほか,商品の所有権留保を行うことも考えられます。